バラモン左翼と商人右翼はピケティの発案らしいが、原典を見ると脚注に以下の記述がある。
In India's traditional caste system, upper castes were divided into Brahmins (priests, intellectuals) and Kshatryas/Vaishyas (warriors, merchants, tradesmen), a division that modern political conflicts in Western democracies seem to follow to some extent.
http://piketty.pse.ens.fr/files/GMP2022QJE.pdf
バラモンと商人では対比しては今ひとつ。せっかくなら他のヴァルナを採用したい。
私が前から考えていたのは、人文系バラモンと工学系クシャトリアの対比。価値に関わるAIの問題に取り組むとき、文理融合のお題目にしたがって人文系に答えを求めてはならない。そんなことをすると、人文系が正しさを司るバラモンになり、工学系は技術を武器にそれを実現するだけのクシャトリアになってしまう。
工学系は仏教を興さなけれがならない。ブッダはクシャトリア出身で、ヴェーダに基づくバラモンの権威を否定した。同様に、工学系は価値に関する独自の解を見出すことで、人文系から解釈権を奪わなけれがならない。
とはいえ、ブッダはバラモンに対するクシャトリアの優越を主張していたわけではない。仏教をバラモンに対するクシャトリアの反乱と見るのは、アンベードカルらによる近現代の再解釈に影響されすぎで、同時代的にはそれほど妥当ではないらしい。
このアナロジーの最大の難点は、工学系の人間には伝わらないこと。仏教やインド史に関する知識が共有されていないから。ということでこの案は没になったが、せめてここで供養しておく。