Replying to Avatar murawaki

『情況』2025年冬号の Nostr 記事を読んだ。Nostr の紹介自体が主眼ではなく、伝えたいメッセージに沿う範囲で言及しているというのが実態に近い。

記事はプラットフォーム寡占を監視資本主義と結びつけて論じるが、プラットフォーム寡占が持つ様々な特性が整理されず、焦点が定まらない印象を受ける。プラットフォーム寡占の特性として、例えば以下が挙げられる。

1. プライバシーの侵害

2. アルゴリズム操作のリスク

3. deplatforming のリスク

記事は 1 と 2 の間を行き来し、3 に触れないまま Nostr が登場する。もし Nostr の紹介が主目的なら、真っ先に 3 を紹介するところ。

Nostr の基本機能はやはり X/Twitter の代替であり、それに関する Nostr の特性は 3 への解、つまり公開の場で発言する権利を維持すること。技術的には、公開鍵暗号の暗号化と署名の2大機能のうち、署名に結びついている。Nostr における暗号化は拡張機能に過ぎないし、暗号的な文脈におけるプライバシーは本来的な機能ではなく限定的であり、Tor との併用等によって確保されるもの ... というのが私の理解。

記事中で明確に主張されているわけではないが、Nostr は積極的に 1 と 2 への解を提供するものというより、寡占プラットフォームを使わないことによって消極的に 1 と 2 を避けるためのものという立場であるように読める。プラットフォーム寡占が起きる理由が利便性である以上、代替サービスにおいて利便性をどう確保するかは重要な課題だと思うが、この点への言及は薄い。(続く?)

Nostr をテクノリバタリアン運動と捉えるなら、その影響力を物理世界の経済活動に広げる必要がある。私の不満は、その道筋が見えないこと。

これはもちろん難問。既存の秩序に挑戦するとして、公海上に浮島を作るという逃避策以外がありえるのか。既存の秩序を置き換える手段はあるのか。それがなければ、既存の秩序に依存しながら、それが許す範囲内で活動するしかない。

既存の秩序を構成するのは GAFAM や政府だけではない。Bitcoin に触れるなら、クレジットカード決済を通じた金融検閲の問題に言及しても良さそうなところ。Cloudflare や Akamai によるネットワークインフラの寡占は、非中央集権の理想とは程遠いが、Nostr はこれに対する解決策とはなりえていない。そして何より重要なのは物理世界の問題。交通機関の乗車記録が管理されている状況への言及があるが、果たしてどのような解決策がありえるのか。

現在の Nostr が実現しているのは、紙と鉛筆のみに依存した活動に過ぎない。物理世界では善良な市民として振る舞いながら、サイバー空間で密かに活動を行うのであれば、現行技術で十分対応できる。活動が暗号=数学と言論の領域にとどまる限りはそれで十分かもしれないが、広がりを欠く。

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