最初こそありとあらゆる物に警戒していたが、慣れという物は時に恐ろしい物で、あっという間に私はこの世界に溶け込んでしまっていた。

なんだ、地球は滅んでなんかいなかったのだ。何故ならここが本当の地球なのだから。

すっかり慣れきった私は、山の奥地でひっそりと構えていた居も捨てて、街へ繰り出し、ついに現地住民と直接コンタクトすることに成功した。

すると何処からだろうか、ものすごく良い香りがする。いや、良い香りというよりも、ある意味いけない香りがするのだ。思わず気になってしまい道行く人に尋ねる。この香りは一体何だ?

ああ、そこに美味い店があるんだ。まあ、わざわざこの国で食べるものではないかもしれないが、それでもこの辺りじゃとても人気の店だからな。

警戒心が解けた今、人間としての生理的欲求がふつふつと湧き上がってくる。空腹には勝てない。私はその店で食事をすることに決めた。事前に収集した情報では、この星の住人が口にする食べ物の成分の組成は、99.99%同じだと分かっていた。

いらっしゃいませー、奥のカウンター席へどうぞー。

ああなんてたまらない香りなんだ、胃がうずうずしてくる。待ちきれない私は、オーダーを聞かれるやいなや威勢良く、一番人気の物でと注文した。

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そして出されたのはピザだった。

驚くほど普通に美味しそうなピザだ。私は呆気にとられた。

こんなことがあってたまるか。未知の料理に心をときめかせていたのに、出されたのはただのピザじゃないか。

しかしよく観察してみると、やっぱり何かがおかしい。

「この星の住人は、ピザの上にラーメンを乗せて食べるのか……?」

何故だろう、ただのピザなのに。私は急にここが地球ではないことを確信した。ラーメンピザは、私の知っている地球には存在しないからだ。