これまでを振り返って興味を持ったものに共通点を見出すと、伝わらないように言語を産出すること。
最近また取り組んでいるステガノグラフィもその一例。テキストが意味的に無関係なテキストに埋め込まれることで、監視者がその存在に気づかない。ただし、これは人間だけでは実現が難しく、計算機の助けを要するためやや特殊。
隠語にも昔から関心はあるが、研究としては手を出せていない。潜在的な顧客のアクセス機会を最大化しつつ、監視者のアクセス機会を最小化するというタスクはいかにも難しい。以前書いたブログ記事は当時の言語処理技術を前提にしていたが、今なら LLM を活用することで監視側が圧倒的に有利になりそう。https://rekken.hatenablog.com/entry/20090610/1244559600
伝わらないように言語を産出することは、決して怪しげな話に限らない。言語変化、特に基礎語彙の変化においても、その一因ではないかと疑っている。音韻変化は話者が自覚しないうちに起こるらしいが、基礎語彙は生活上必要不可欠な語彙。変化に話者が気づいてそうだし、仮に無意識であったとしても、競合語の使用頻度が変化し、いわゆる S 字カーブを描く場合、その運動量が何に由来するのかという問いになる。結果として、意識的な語選択と同じ要因に行き着く可能性がある。その要因とは、若者が上の世代に伝わらないように語を使うことであり、それがそのまま年齢を重ねるにつれて定着する、という話があったはず。たしか Labov あたりに。